地元事業者の声 Local Voice

亀萬酒造合資会社(津奈木町)

天然醸造の日本酒製造 受け継がれる製法と今後の挑戦

亀萬酒造合資会社 竹田 瑠典

津奈木町

日本酒造りに適さない温暖な気候の県南で、酒造りに奮闘する酒造があります。それが津奈木町の『亀萬酒造』。大正5年(1916年)に創業。全国最南端の日本酒専門製造元として長年風土に根ざした酒造りをしてきた蔵元です。県の南部に位置する大関山の清らな伏流水と熊本の酒米、そして守り続けている伝統的手法で織りなす日本酒は、ふわりと香り、柔らかな印象。食事と共にいただく食中酒として人気で、今まで日本酒を敬遠していた女性をはじめ、全国にファンを持つほどになっています。

人気の秘密は手造りならではのこだわりの製造方法にも。主原料である米は、精米、洗米、蒸米という3段階の工程を踏み、やっと麹造りへと移ります。その後、酒母造り、もろみ仕込み、しぼり、濾過、最後に火入れ、貯蔵、瓶詰めを経て出来上がります。また、気候としても酒造りにはギリギリの環境であるため、仕込み時に氷を入れる独特の製法を続けているそう。恐ろしく手間がかかる酒造りを社員一丸となって取り組み、地域に愛される酒を生み出しているのです。昨年念願叶って、純米吟醸酒「萬坊(まんぼう)」が、世界に誇れる日本酒としてその年の一級品に贈られる「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2019」のプレミアム純米部門で最高金賞を受賞し、ますます注目度が高くなっているようです。

「最近米作りを始めたんですよ」と話すのは、四代目で専務取締役の竹田瑠典さん。
「これだけ美味しいお酒が県内外に溢れている中で、どう差別化していくかと考えた時に、蔵の背景を伝えるために、自分たちで作る“津奈木米”で酒造りをしたいと思ったんです。米農家としては食米を作る地域で、そこで、山田錦作って!とお願いするのもハードルが高い話。私たちで成功事例を作ることによって、少しでも周りの農家さんが協力してくれる環境作りに取り組んでいます。でもまだ1タンクいくかいかないか程度しか出来ていないので、いずれは全部のタンクを自家製米で作れたら理想的です。自分たちで米を作ったら、酒の仕上がりに言い訳が出来ないからですね」。受け継がれる安定した酒造りはもちろん、常に美味しい酒を作るためのアップデートに余念がないのが伺えます。また竹田さんは今後についてこうも語ってくれました。「飲食店の料理とうちの酒との“ペアリング”に挑戦したいと思っています。食事と飲める美味しい酒として、色々と挑戦していきたいですね」。