地元事業者の声 Local Voice

桜野園(水俣市)

みなまた和紅茶のおいしさの秘密は 豊かな風土と人を思う気持ちにあった

 

桜野園 松本 和也

水俣市

水俣市の和紅茶の生産農家の一つに『桜野園(さくらのえん)』があります。昭和3年に開拓し、現在91年目となる歴史ある農家です。ここで育てられているお茶は和紅茶の他、緑茶、ほうじ茶など現在6種類。1990年よりすベてのお茶を無農薬・無化学肥料で栽培しており、2005年からは肥料・農薬を一切使わない自然栽培にも取り組んでいます。話を伺ったのはこちらの4代目・松本和也さん。「水俣で作る和紅茶の特徴は緑茶用の品種で作っているから、渋みが少なく甘味が強くて飲みやすいと思います。うちで作っている紅茶は香りも素朴です」と話す通り、松本さんが作る和紅茶は、飲み口が柔らかく、優しい甘味に包まれます。中でも、二番茶を完全発酵させた“さくら紅茶”は、イギリスはロンドンの紅茶専門店『ポストカード・ティーズ』の店主・ティムさんに気に入られ、約10年前に海を渡り、紅茶の本場イギリスで飲まれているというから驚き! 渋みが少ない和紅茶特有の繊細な甘味と香りに、現地の紅茶通をも虜にしているんだそう。この現象に松本さんも当初は驚いたものの、国内外問わず「好き」と言ってくれる人が増えていくにつれ、ちょっとづつ自信を持つ事が出来たと話します。

『桜野園』の紅茶が愛される理由は、歴史や経歴だけではありません。美味しいを極めるため、たくさんの人に飲んでもらうために始めた“自然栽培”もまた、人を魅了する理由だと考えます。「約30年前から無農薬の農業に取り組み始めましたが、その頃は有機質の肥料も使っていました。15年前に“無肥料”というワードを耳にしたときに、これはいいな、究極だ!と思い、そちらに方向転換。すベてに良い影響を与えていますよ」と松本さん。農家を営む家族が営農していくため、なおかつ、肥料もやらない地下水も汚染しないので自然にも良い。生産者と消費者が幸せになるために、どこまでも自然と人に優しい環境を作り守っている松本さんの姿に、みなまた和紅茶の美味しさの理由が見えた気がします。