地元事業者の声 Local Voice

NPO法人ばらん家(芦北町)

海風であまく育つ 唯一無二の黒糖づくり

 

NPO法人ばらん家 松原 孝樹

芦北町

日々の料理やおやつに欠かせない調味料である砂糖。毎日食べるものだから、できるだけ体に良いのが嬉しいというのが本音。そこで注目されているのが芦北・水俣で栽培されている「黒糖」です。海風が当たる芦北・水俣地域では、黒糖を作る文化が古くから受け継がれてきました。芦北町にある『ばらん家(ち)』では、不知火海を臨む畑でサトウキビを栽培、製糖し様々な商品を作っています。注目されるのはその栽培方法。3〜4年熟成させた竹パウダーを堆肥にし強い土壌を作り、害虫駆除や手作業での除草には自家製の竹酢液を散布するのみで、無農薬を貫き12月の収穫を迎えます。また、黒砂糖の質を高めるために3メートルほど伸びたサトウキビの糖度の高い根から1.5メートルの部分しか収穫しないそう。残りの部分は霜除や、来年の株として大切に保存しています。収穫したサトウキビは圧搾機で絞り丁寧に焚き上げた後、混ぜたりと煮詰めたりと驚きの手間と労力をかけられ砂糖になるのです。

ここ『ばらん家』は障害者支援施設として2006年に設立。精神障害を抱える人たちが自然に触れることで病を克服できるようにと始まったのがサトウキビの栽培でした。「障害を持った人というのは、環境と一緒。自然を大事にしていくという気持ちで栽培に取り組んでいますよ」とは代表の松原久美子さん。無農薬・無肥料という純度の高い農業の姿勢も「すぐに口に入れられる安心で安全なモノを作りたい」との思いが反映された姿なのです。
出来上がった黒糖はさくさくの食感で、口溶け抜群。昔懐かしい黒糖本来の味が楽しめます。甘さがくどくなく、スッキリとしたキレとわずかな酸味さえ感じる味わいは、「ばらん家」の黒糖ならでは。一度黒糖にしたものを溶かした“黒みつ”や、黒糖になる前にサトウキビから絞り出し、煮詰めて取り出した“黒糖蜜”など、どちらもサトウキビのエキスが濃縮されています。地元ではそのまま食べる人もおおく、料理の旨味づけやお菓子作りなどにも使えるので、知る人ぞ知る“地元の味”として愛されているのです。